陽に暖められたダッシュボードの臭いに ふと思い出たちが甦る 腕時計の文字盤に反射した光が 車内を 走りまわる 私は笑みを浮かべているか? 世界は今 じつに美しく 驚愕するほどに素晴らしく 生まれ変わり それはまるで ひとりきりの小さな冬の朝の ようだ シートにもたれて 車を走らせるのをしばし ためらう 何がわたしを撃つかわからない 予感の香りすらなく 態勢をたてなおす間を 与えず キーをまわそうとしていた 私の中心を正確に 撃ち抜いて 2002年10月27日