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放射能汚染瓦礫と産廃とカッパのかーやん
2011年3月11日に福島の原発事故が起きて以来、ずっと放射能の問題に関わって参りました。
そして、このたび、原発廃絶を一貫して訴えてこられた、京大原子炉実験所の小出裕章先生の『小出裕章 原発と憲法9条』を出版いたしました。
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いま、放射能汚染瓦礫が問題になっています。そして原発立地交付金も。
このことを勉強すればするほど、私が新婦人新聞で連載した児童文学『カッパのかーやんと金色の災い』で取材した内容が思い出されます。
『カッパのかーやんと金色の災い』のテーマは、産廃問題。
都会で出てくるゴミを山の中に不法投棄するという問題が、奈良ではずっと続いていて、そのことを子ども向けの物語にしたのが、『カッパのかーやんと金色の災い』でした。
この物語の中では、ゴミの不法投棄に反対する村民が出てきます。
夜中にゴミを持ち込む業者を監視するというような活動もしていますし、業者と戦ってもいます。
「ゴミを持ち込むな」
「ゴミを持ち帰れ」
それが、物語の舞台である天の川村の村民の一致した主張です。
ところが、物語上で、超自然的なあるハプニングがあって、不法投棄されたゴミの山が黄金に変わるということが起こります。
黄金と化した、ゴミの山。
すると村民は、それまで「持ち込むな、持ち帰れ」
と訴えてきたゴミの山を今度は、自分たち村民の所有物だと言いだします。
一方、ゴミの不法投棄を強行していた産廃業者も、一転、ゴミの回収を宣言するのでした。
対立はそのままに、主張がそれぞれ180度ひっくり返ってしまうのです。
そして、村民と業者との戦いとはまた別のところに、言葉を発することができない関係者がいます。
相変わらず生活環境を破壊され続ける土着の生き物たちです。ゴミが黄金に変わって、彼らの生活環境は悪化する一方なのです。
生きる場を失う弱い生物たちが、物語の中には出てきます。ふくろうや、たぬき。その生き物たちの代表として、カッパのかーやんはいます。
カッパのかーやんシリーズは、基本的に愉快な楽しい物語なので、ゴミが黄金になったとたんに心変わりしてしまう村民の姿も、皮肉というよりも、息もつかせぬどたばた劇として描いています。といいますか、はじめから皮肉の意図はないのです。
ほんとうにかけがえのないもの。つまり、あまりにも貴重で、繊細で、独特であるが故に、商品化できないものがこの世にはあるし、貨幣では計れない価値もこの世にはあると私は信じていますし、そうした価値基準から見れば、価値の尺度という点において、ゴミも黄金もさしてかわりのないもの、という、ちょっと過激かもしれないけれど、そういうことを伝えたかったのです。
もちろん、子どもたちに。
物語の主人公の子どもたち三人組---裕太、ケン、鈴香--は、黄金などというものにはまったく興味がありませんから、自分たちにとってほんとうに大切なものを守るために走り回ります。
つまり、友人のカッパを……、途方もない苦しみから友人のカッパを助けるために、です。
ゴミが黄金に変わる。
ファンタジーにだけ可能な---人によってはほら話と言ってきりすててしまうかもしれませんが--と思っていた奇妙な出来事を中心に、『カッパのかーやんと黄金の災い』という物語は展開します。
さて。
黄金となったゴミは最後にどうなるのか?
結末はここでは語らないでおきましょう。
この物語の最後の一行に、すべての思いを未来の社会を担う子どもたちにたくしたつもりです。
なぜならば、この問題のほんとうの解決は、物語の最後の一行に句点がはいって物語が終わって、そのさらに先にあるからです。
2012年1月11日 溝江玲子
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玲子のプロフィール
溝江玲子 山羊座で12月27日と暮れも押し詰まった大変忙しい時期に生まれました。
昭和12年、旧満州国奉天に生まれて、上海に育ち、終戦後に大連から引き揚げてきました。もう、戦争はこりごりです。
職業はと聞かれると、答えがいく通りもでてきます。一番格好よく答えると、作家かな。それから、7年前立ち上げた遊絲社(ゆうししゃ)という出版社の代表です。
趣味は読書とお絵描き、素材のページのキャラクターの原画も描いています。
へこんだときに呟く言葉は「人間 万事 塞翁が馬」。これで、幾多の試練を乗りきってきたのです。
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