手編みのマフラー
風の強い日、毛糸のマフラーを頭からかぶって、ぐるぐると巻きつけます。手編みの長いマフラーです。少々の風が吹いても、このマフラーを頭からかぶると暖かいのです。お買い物いくときも郵便局にいくときも愛用しているマフラーです。
それは、下の子が保育所に行っていたときに、私が編んでやったマフラー。薄茶色に、先の方に紫の縞を入れた、今でも使えるおしゃれな色です。その当時、なんだかやたらと長いマフラーが流行っていて編んだのです。
そう、もう20年以上も前のこと、自転車で保育所に送っていく寒い朝、表に出ると二人の息が真っ白にふうふう出る朝など、このマフラーを子どもに頭からぐるぐるに巻きつけるのでした。
保育所まで全速力で自転車を飛ばして走ります。保育所に着いて自転車から子どもを抱きおろすと、真っ赤な頬っぺをしています。マフラーをしていても冷たい頬っぺ。そこでも子どもの白い息が、ふうふうと出ていました。
「おかあちゃん、いってらっしゃい、はやく、おむかえ、きてね!」
と、小さな手を一生懸命振ってくれました。
いろんなこと、そのマフラーをすると思い出します。
遠い日の思い出です。そのときの子どもの顔が、ぼやんとしています。もっと子どもとかかわればよかったと、ちょっぴり後悔も湧いてきます。働いていて忙しくて、あまりに駆け足で通り過ぎてしまった大事な時……。
この毛糸の手編みのマフラーを巻くと、ふわんと、胸が、あったかいもので満たされてきます。
2002年1月6日 店長 溝江玲子
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