韓流マダムin『ドラマより面白い チャングムを旅する54話』


お友だちの高ヒョンミさんが、明石書店さんから新刊本をお出しになさることになり、そのことでわざわざお電話がありました。
「溝江先生、またまた本を出版することになりました」
「またまたですか」
と私は答えます(ヒョンミさんは礼儀正しいかたなので、私のことを先生呼ばわりなさいます)。
「またまた、またまたなのです。忙しくて目が回ってます」
「またまた、またまたなのですね。目が回るほどお忙しいのだから、私のところにまでお電話して下さらなくても良いのに!」
「いえ、今回の本は、断りもなく溝江先生のお写真を使わせていただいたているので、関係あるのです。事後承諾ですが、何卒よろしくお願いいたします」
およ?なぬ?
それはなんという美女写真集?
新刊本は写真集ではなくて、タイトルは『ドラマより面白い チャングムを旅する54話』なのだそうです。
宣伝のために(お友だちの高ヒョンミさんの新刊本であり、私のお写真も入っている)もう一度書きますね。
『ドラマより面白い チャングムを旅する54話』明石書店。
高ヒョンミさん・著。
1600円!
チャングムとは、人気テレビドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』の主人公のチャングムです。テレビはほとんど観ない私でも知ってます。
といいますか、本当は、土曜の夜は毎週かかさず夫と一緒にテレビの前に座って『宮廷女官 チャングムの誓い』を観ております。ばっちりです。韓国の歴史大河ドラマで、封建体制の16世紀の朝鮮王朝に実在した女性医師・チャングムの物語。主演のイ・ヨンエさんが若いころの私にそっくり……と本人は思っております。
色の白さでは微差で負けてはいるものの、他ではけっしてひけをとってはいなかった! と言うと、夫も、う〜むと申します。これは、肯定の言葉なのだと解釈しております。ああ、でも、私の美貌が素晴らしいので本に掲載されたというわけではないんですけれどね。
……当然ですね。
おふざけはおいておいて、本に掲載されたのは、「チマ・チョゴリをお買い物する決定的瞬間」なのでした。
キモは、私の美貌ではなく、チマ・チョゴリのあでやかさ、鮮やかさにあったわけでして……。

『宮廷女官 チャングムの誓い』は16世紀の朝鮮王朝が舞台ということですから、登場人物たちは皆、当時の衣裳を身に着けております。日本の時代劇ではお侍さんが腰に大小の刀を差して、チョンマゲ頭で堂々と歩いているように、ドラマの人物たちは朝鮮王朝の伝統衣裳に身を包んでおります。で、私、韓国旅行をしたさい、この宮廷女官を着せてもらって、かつらまでかぶったんですよね。モデル気分で写真もばちばちと撮ったんですよね。
そのときの撮影者が、高ヒョンミさんだったと。
写真を撮ったときは、私自身はドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』を観ていなかったんですけれど、私の知らないところで、日本人マダムたちの宮廷女官扮装ブームが巻き起こっていたようなのです。
私は、ほら、京都で浴衣からのぞいた胸毛をたなびかせたり「誠」と毛筆体で書かれた手ぬぐいを鉢巻きにして歩いている青い目のカナダ人さんたちのように、きっと猛烈な違和感を周囲に振りまいていたに違いありません。
ま、それが旅行者の特権というものですけれど。
ちなみに、韓国旅行したときには、私は右手の中指を骨折していて、写真でもちゃんと、ぐるぐる巻きの包帯をしております。
それでも、ばさばさと韓国のお札はしっかりと握って。
左手はバッグの中に突っ込まれておりますが、そこにもお札が。
「買い物するぞ〜、買ったるぞ〜!」
という、焼き肉の照りにも似た欲望の発露がよく写しだされた写真ですね。
写真のキャップションは、
「韓流マダムもついつい欲しくなるマイ・チマチョゴリ」
というか、高ヒョンミさん、写真の選び方が適切すぎません?
とほほ。
今度韓国旅行に行ったときは、宮廷女官のかつらをかぶってお買い物しよう。



2006年10月6日  溝江玲子


玲子のプロフィール

溝江玲子 山羊座で12月27日と暮れも押し詰まった大変忙しい時期に生まれました。
昭和12年、旧満州国奉天に生まれて、上海に育ち、終戦後に大連から引き揚げてきました。もう、戦争はこりごりです。
職業はと聞かれると、答えがいく通りもでてきます。一番格好よく答えると、作家かな。それから、7年前立ち上げた遊絲社(ゆうししゃ)という出版社の代表です。
趣味は読書とお絵描き、素材のページのキャラクターの原画も描いています。
へこんだときに呟く言葉は「人間 万事 塞翁が馬」。これで、幾多の試練を乗りきってきたのです。

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