贈り物

心斎橋大学に到着すると事務局の方に声をかけられた。
「藤本芽子さんから、先生にプレゼントが届いているんですよ」
事務局に顔を出すと、ちょっと大きめの板チョコのようなプレゼントが、包装紙に包まれて私を待っていた。細いリボンを掛けてある。ぜんぶでここのつ。 私と、私の「絵本・児童文学の創作講座」の大学院コースの生徒たちひとりひとりにひとつずつのプレゼントだ。包装紙に小さなイラストと個人名。
私のプレゼントには「ミゾエ レイコ サマ」だ。
藤本芽子さんはコラージュアーティスト。心斎橋大学出版の新刊『あなたにとどけるものがたり2』の表紙絵ならびに挿絵を手がけて下さっている。となると、包装紙の中身は察しがつきそうなものなのに、事務局の方は
「なんですか、中身は? チョコレートでしょう!」
なんて言う。
「違います」と私。
「えっ、違うのですか。開けなくても分かるの?」
と事務局の方は不思議そう。
彼女の目の前でリボンを解いてあげてもよかったのだけれども、私に贈られたプレゼントを開封せずに持ち帰ったのは、もちろん、写真に撮って細腕日記にアップするため。飾りに結んだリボンもそのままに、アップロードしたかったのです。
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チョコレートかと思われたプレゼント


デジカメで写真を撮ってから、そっと包装紙を開くと、思った通り、それは小さな額に入った藤本芽子さんの原画だった。
私の『かっこう鳥(どり)』という短編に、藤本芽子さんが才能を注いで描いてくださったイラストだ。
額はふたつある。
『雪おろし』という短編のためにも、イラストを描いてくださっていて、これは前年に発行した『あなたにとどけるものがたり』に収録された短編だけれども、本の挿絵としては収録されなかったもの。私だけの宝物としてプレゼントしてくださった。なんという贅沢な。
本があふれて今にもこぼれ落ちそうな本棚を少し整理して、イラストが収まったふたつの額を本箱に飾った。

写真キャプション 私だけの貴重なオリジナルイラスト


普段は古い歌謡曲などを聞いている私だけれど、息子にクラシック音楽のCDを借り、ショパンのピアノ曲をエンドレスに流しながら、紅茶は切れているので煎茶を飲み、しばし本棚を眺めたりして。
浮かれ気味の私の気持ちをどうか察してやってくださいな。

 

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心斎橋大学のお知らせ

心斎橋大学は、プロの作家を育てる学校です。
溝江玲子は『絵本・児童文学』の創作講座を受け持っています。
心斎橋大学のHP。
毎月最終の土曜日に6時半から、藤本義一ほか講師陣がみなさんからお題をいただいてトークする『ぶっちゃけとーく』という催しがございまして、入場料千円で誰でも参加できますので、よろしかったら遊びに来てみませんか?
電話06-6241-0770



2007年3月22日  溝江玲子


玲子のプロフィール

溝江玲子 山羊座で12月27日と暮れも押し詰まった大変忙しい時期に生まれました。
昭和12年、旧満州国奉天に生まれて、上海に育ち、終戦後に大連から引き揚げてきました。もう、戦争はこりごりです。
職業はと聞かれると、答えがいく通りもでてきます。一番格好よく答えると、作家かな。それから、7年前立ち上げた遊絲社(ゆうししゃ)という出版社の代表です。
趣味は読書とお絵描き、素材のページのキャラクターの原画も描いています。
へこんだときに呟く言葉は「人間 万事 塞翁が馬」。これで、幾多の試練を乗りきってきたのです。

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