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憲法前文と九条を覚えるための本、出版しました。
『えんぴつで憲法練習帳 日本国憲法前文日本国憲法第九条』という本を発行しました。
文字通り憲法前文と憲法第九条を鉛筆でなぞり書きする本です。
本の画像をクリックすると、遊絲社のホームページに移動しま〜す |
企画を思いついたのは、国民投票法案が国会で強行採決される直前のこと。今の国会はほとんど全ての重要議案が強行採決で決まっていく異常事態で、じゅうぶんな議論も国民の理解も不十分なまま憲法が変えられようとしていることに、危機感を覚るいっぽう、強行採決されるのだから、国民投票法案も可決されてしまうのだろうな、と感じ……ズにはおれない状況のさなかでした。
ふくれあがる不安を胸に感じながら、私は、
「憲法が改正されたら、例えば、第十一条の基本的人権はどうなるかしら?」
と息子ふたりに訊ねました。すると息子どもは、
「見てくれは立派な憲法になるだろうし、きっと基本的人権の条文は残るだろうけど、そのなかで“有事のさいには人権などと悠長なことは言っていられない。もっと優先されなければならないものがある”という意味の内容、ワナがどこかに追加されることになるんちゃうかな」
という意見を暗い顔で語るのでした。
まあ!
悲観主義はこちらの元気まで奪われるみたいで私は嫌いだけど、このときは、息子の予想と私の予想は一致していたのです。
このままでは、全世界から高い評価を受けている非戦の誓い、日本国憲法九条も危ない。
私の子どものころは、学校で憲法の授業がありました。憲法前文、そして九条が掲げる理想に、子どもながらに胸を熱くしたものでした。
ところが、今の学校では、憲法をちゃんと勉強していないのだと、聞きました。
周囲の若い人の中には、
「九条って京都の方? 奈良の方?」
なんて言う人もいます。憲法の九条だと言っても、なにも知らないんですね。驚きましたが、それも仕方がないこと。だって、教えてもらってないのですから。
憲法が保障している自由や権利を国民は“不断の努力”によって守っていかなくてはいけない、と、憲法第十一条の次の第十二条に書いてあります。基本的人権や自由、それから平和というものは、憲法が保障するから自然とそうなる、というたぐいのものではなくて、国民の不断の努力によってしか守りようがないのだ、と、憲法自身が国民に呼びかけている……少なくとも私はそう解釈しています。
日本国憲法を書いて理解し、日常の中で活かしていこうにも、その存在も知らないというのでは何も始まらない!
憲法を覚える本がないのなら、もう作っちゃおう。それが、不断の努力の第一歩になるのではないか、いや、なる! 決めたらあとは走り抜くのみでした。
企画を思いついた次の瞬間から17名にのぼる執筆陣にお電話をかけてまわり、
「憲法について原稿を書いてください。締め切りは明日です」
なんて無茶をお願いしました。それでも、イギリス人のチャーリーさんを含む皆さんは、快く執筆してくださいました。心から感謝いたします。
なぞる文字は、色を灰色にしてあります。その灰色の文字を鉛筆でなぞるのです。数ページにわたって繰り返しなぞり書きできるようにしてあります。
お値段も630円(税込)とギリギリまで価格を抑えました。売っても売っても黒字になりませんが、そういう本があってもいいと思います。ありがたいことに、
「憲法をまったく知らないので購入しました」
「夫婦で練習するので、2冊買いました」
というお電話をわざわざいただいたりして、本当に出版してよかったなあ、と思います。でも、もっともっとひろめなくちゃ!
朝日新聞さん、奈良新聞さん、大阪民主新報さん、奈良民主新報さん等々、多くのマスメディアにも取り上げていただき、憲法前文と憲法第九条が広まる機運も着々と高まっている気がします。
最寄りの書店でも御注文可能です。
憲法の文章を見ているだけでは、なかなか覚えられません。手を動かして書くという作業をするだけで、記憶力がアップし、字もきれいになるというおまけ(?)もついてきます。見る、読むという受動的な行為だけでは不十分で、やはり自分の手で書くという能動的な行為が、力となると思います。
念押しに繰り返しますが、この本は、書くという作業を行って憲法第九条、そして憲法前文を覚えようという目的で作られました。
正直に言うと、内容の意味を把握していれば、一言一句おぼえている必要はないかもしれません。ただし、それは個人的な範囲に限っての話。
今、憲法を変える、変えないについて活発に運動が展開されなければならないとき。その際、憲法をきっちり覚えていないのであれば、議論のさいにかなり説得力が減ってしまうことでしょう。この本は、人と憲法について対話するための土台となるものです。
そしてその対話が、民主主義と平和を守る力になれば、と願っています。
*執筆者リスト
鈴木良、推薦・大久保哲夫。岩佐ダン吉、上殿紀久子、河角勝子、篠原秀子、園部勝章、野田淳子、藤元百代、松本千鶴子、溝江玲子、矢野宏、湯沢和子、吉兼和子、チャーリー・ワード、西谷文和、鳥越信
2007年6月5日 溝江玲子
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玲子のプロフィール
溝江玲子 山羊座で12月27日と暮れも押し詰まった大変忙しい時期に生まれました。
昭和12年、旧満州国奉天に生まれて、上海に育ち、終戦後に大連から引き揚げてきました。もう、戦争はこりごりです。
職業はと聞かれると、答えがいく通りもでてきます。一番格好よく答えると、作家かな。それから、7年前立ち上げた遊絲社(ゆうししゃ)という出版社の代表です。
趣味は読書とお絵描き、素材のページのキャラクターの原画も描いています。
へこんだときに呟く言葉は「人間 万事 塞翁が馬」。これで、幾多の試練を乗りきってきたのです。
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