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      『老いて育ち盛り』発売の巻
      溝江玲子の最新エッセイ本『老いて育ち盛り』が、発売されることになりました。 
        前書きから、一部抜粋してご紹介しちゃいますね。 
      
      
      
         
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        はじまりはじまり……の前に 
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        「溝江さんは少女のようなひとですね」 
        同性のあるひとから面と向かってそのように評価されたことがあった。69歳になった直後のこと(今は71歳です)。私は彼女の言葉を褒め言葉と受け取って、 
        「いえいえ、そんなこともないのよホホホ」 
        などと返したのだけれど、ふた月ほどたってから、また同じひとから、同じことを言われた。 
        「溝江さんは少女のようなひとですね」 
         パッと喜びそうになって、何かに気がついた。 
         う〜ん? 
         言葉というものが持つ多様性、多義性、ニュアンスの影の部分に、二度目にしてようやく思い至った私。 
         そう。 
         ふた月かけて、念押しされて、ようやく、だ。そのとき私は、ちょっぴり自分を恥ずかしく思いながら、相手に 
        「そうですね」と答えた。 
         最初のときは謙遜して「そんなこともないのよ」なんて答えていたのに、今度は、そうだ、少女のようなのだ、と認めたわけ。彼女は「少女」と“二度”言ったけれど、おそらく、きっと、「いつもキーキーと騒がしく楽しく、まるで小猿のようだ」というような意味で言ったんだと今になって思う。 
         そんなふうに考えていくと、自分の格好悪さばかりがこちらに向かって押し寄せてくるような気にもなってくる。まあ、69になってそんなことを考えても仕方がない、とすぐに開き直るのは、人生経験の多さゆえ。実際、世間ではおばあちゃんで通す他はないような、そんな年齢なのだ。自分がおばあちゃんであるというのは、ものすごい違和感がある。少女にはそれほど違和感はないのにね。こういうふうに書いてゆくと、ちょっと、自分でも呆れるところがある。 
         私が「少女のよう」だとして、もしくは自称「子猿のよう」だとして、私が私であることの楽しさというものが自分の中にはある。私は私の楽しさにいつもかまけてばかりだから、それを外側から眺める、という作業がついついおろそかになりがちだ。文筆業を営むものとして、自分が自分であることが小猿のように楽しい、というだけでいいのか、という問いはあるんだろうけど。 
        (以下続く) 
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        笑いあり、笑いあり、やっぱり笑いの、楽しいエッセイに仕上がっているんじゃないかなあ。 
        挿し絵もいっぱいですので、楽しんで読んでいただければと思います。 
        
       
         
      
      2009年1月15日  溝江純 
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        玲子のプロフィール 
      溝江玲子 山羊座で12月27日と暮れも押し詰まった大変忙しい時期に生まれました。 
        昭和12年、旧満州国奉天に生まれて、上海に育ち、終戦後に大連から引き揚げてきました。もう、戦争はこりごりです。 
        職業はと聞かれると、答えがいく通りもでてきます。一番格好よく答えると、作家かな。それから、7年前立ち上げた遊絲社(ゆうししゃ)という出版社の代表です。 
        趣味は読書とお絵描き、素材のページのキャラクターの原画も描いています。 
        へこんだときに呟く言葉は「人間 万事 塞翁が馬」。これで、幾多の試練を乗りきってきたのです。 
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