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韓国女一人旅(6)

 

東大門市場へ
日本人相手ではない問屋

ソウルで私が泊まったのは、日本でいう民宿形式の「剛の家(つよしのいえ)」という宿である。そこでは、宿泊客以外にも、キムチ作りの体験やチマ・チョゴリを着ての写真撮影などをしている。

色とりどりのハンボク(チマ・チョゴリ)
に囲まれ、御機嫌の筆者

そのチマ・チョゴリ姿の美しいこと、鮮やかな色彩溢れた衣装で、見ているうちに、私も一着、どうしても手に入れたくなってしまったのだった。
それを聞いた、フードジャーナリストのヒョンミさんが、
「それでは、東大門(トンデムン)市場(シジャン)に行きましょう!」
と言った。
東大門は大きな市場で、色んな問屋が集まっており、衣料の問屋もあるからという。私は、高校1年生のダヘちゃんと一緒に出かけ、ヒョンミさんと待ち合せをし、それから地下鉄で東大門市場に向かったのであった。日本人が主に行くのは、南大門(ナンデムン)市場の方だということであった。
地下鉄を上がると、歩道には、屋台がずらっと並んでいた。
東大門市場の中の道路の真ん中にも露天が出ている。色んな魚類が並べられている通りもある。ムンムンした熱気だ。歩いていくと、なんと、道路の真ん中に櫓を組んだものがあって、食堂みたいになっており、そこで食べている人がいる。人がぞろぞろ通っている中で悠々と食べているので、驚いてしまった。
いよいよ衣料の問屋が固まってる通りに入ると、各々の店には何着も目を奪うばかりのチマ・チョゴリが並んでいる。韓国ではチマ・チョゴリとは言わずにハンボクというそうである。いろいろのハンボクの中から、ヒョンミさんとダヘちゃんは、自分が着るように熱心に、「あれがいい」「これがいい」と言うのであった。ここでのお店の人とのやりとりも、すべて韓国語で、日本人相手のお店でないことが分かる。
私が、ついに買ったのは、スカートが小豆色系の濃い桃色で、上着は薄桃色、袖口は白のハンボクだった。袖口や衿などに花の刺繍がある。
ハンボクだけでなく、靴と靴下と飾り物のノリゲが入用なのであった。
靴は、繻子のような布でローヒール、つま先がオランダの木靴のように尖って上に反り返っている。私は、全体が紺色で、つま先の部分が桃色に金の糸で刺繍がしてあるのを選んだ。靴下は白で、とても分厚いのには驚いてしまった。
飾り物は、蝶が連なっているもの、瓢箪、縁起物、いろんな花などが紐で細工されており、ノリゲと呼ばれている。それが余りに綺麗なので、私は6本も買い込んだ。

溝江玲子

奈良新聞掲載2005年11月26日

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玲子のプロフィール

溝江玲子 山羊座で12月27日と暮れも押し詰まった大変忙しい時期に生まれました。
昭和12年、旧満州国奉天に生まれて、上海に育ち、終戦後に大連から引き揚げてきました。もう、戦争はこりごりです。
職業はと聞かれると、答えがいく通りもでてきます。一番格好よく答えると、作家かな。それから、7年前立ち上げた遊絲社(ゆうししゃ)という出版社の代表です。
趣味は読書とお絵描き、素材のページのキャラクターの原画も描いています。
へこんだときに呟く言葉は「人間 万事 塞翁が馬」。これで、幾多の試練を乗りきってきたのです。

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