*オメラスから歩み去る人々*(2011.5.22)
「日本では表現の自由の制限はどんどん深刻になっている。郵便受けにビラを入れたら家宅侵入罪とか、歌を歌わない人が迫害されるとか(たとえその歌が「国歌」でも)やばいよね」
〜池澤夏樹『完全版池澤夏樹の世界文学リミックス』〜
「わたしはこの憲法のために、正義の戦いを戦った。しかし、この国は火星人か宇宙人からの侵略者に侵略されてしまったのではないだろうか。ときどき、そうだったらいいなと思わないでもない。しかし実際はそうではない。この国は、薄っぺらな低俗なコメディみたいな「キーストーン・コップス」的手段によって、一気に乗っ取られてしまった」
〜カート=ヴォネガット『国のない男』〜
自身の権力の浸透を確認せずにはおれないハシモトのような、はっきり言って愚にも付かない人間を、庶民が支持する。
産経新聞から。
『橋下知事「当たり前」 国歌起立条例で攻勢へ』
ハシモトの言う「当たり前」、とはどういうことか。
こういうことだ。
戦犯と呼ばれる特殊な人材がどのような社会システムから生まれてくるのか、身を持って体験する大阪府民の日々。
民主主義ロジック解釈の圧倒的水準の低さ。
議論の土壌の構築さえ不可能なほどの、市民要求の低次元化。
教育や啓発を徹底的に軽視してきた社会の、ひとつの成果だ。
おまけ。
奈良女子大学で行われた小出裕章先生の講演を聞いてきました。
生小出先生に会えました。
『小出裕章
(京大助教) 非公式まとめ』で紹介されている最後のツイートは、うちの玲子です。
*小出先生がシニア決死隊に志願していた*(2011.5.11)
「最後の生き物が
わたしたちのせいで死んでしまったとき
思えばなんと詩的だろうか
仮に地球がこう言えるとしたら
湧きあがる声で
そうたぶん
あの
グランドキャニオンの谷底から立ちのぼる声で
「さあ、終わった」
人間はここが好きじゃなかったんだ」
〜カート=ヴォネガット『国を失った男』〜
「ひとりひとりの個人の運命を改善することなくしては、よりよき社会の建設は不可能です。ですから、各人が自分の運命を切り開いていこうと努力しながら、しかも同時に全人類にたいして責任をわけ持たねばならないのです。
なぜなら、自分が一番役にたってあげられる人々を助けることは、私たちひとりひとりの義務だからです」
〜キューリー夫人〜
京大の小出先生が、福島原発暴発阻止行動プロジェクト(仮称・シニア決死隊)に志願していたことが判明。
『小出裕章 (京大助教) 非公式まとめ』から。
『5月10日
私もシニア決死隊の一人です 小出裕章』
☆☆☆☆☆☆☆
私もその一員だ。60人の志願者の中に入っている。
☆☆☆☆☆☆☆
いや、もう、ちょっと、あかんて、先生。
テレビの画面からお茶の間に向かって「大丈夫」連呼している連中に行ってもらったらいいんちゃうの。
“大丈夫”なんだから、よぉ。
なんで小出先生が……。
おまけ。
話があっちに行ったりこっちに行ったりで申し訳ないが、原発問題という点では共通している。
USTREM動画放送から、後藤政志さんによる5月9日時点の原発事故のお話。
『CNIC
News 福島原発解説 後藤政志氏』
私自身が、現時点で、ひたすら原発と放射性物質または今回の福島原発事故の情報をひたすら取り込み続けている状態だから、書く文章だってとりとめもなく、まとまりもない。
ちなみに、私は後藤さんの個人的なファンだ。
後藤さんの口から語られる言葉には、小出先生や、田中三彦さんや、樋口健二さんたちに対する信頼と同じく、深い信頼を置いている。
それは、科学リテラシーの確かさやロジックの確かさ、公明正大性というものに立っているわけだけれども、それは別にして、私は後藤さんに惹かれるところがある。
後藤さんのお話は、一人語りの時間が経つにつれて、
人間的な切迫感や必死さ
というものが語調というものにはっきりと現れてきて、それが私の胸を打つのだ。
「冗談じゃない!」
「ふざけるんじゃない!」
と言いはなって、ふと我に返り、
「……と、そういう関係なんですね」
と、いったんトーンダウンする。
だけど、すぐにまたヒートアップしてしまう。それでも、人間としての品というものをお持ちだから、けっして下品にはならない。
まあ、こういう話はまったくもって本質的ではないが、私がどうして後藤さんに惹かれるのか、そういうことも少しだけ考えた。
おまけの2。
また小出先生に戻る。
今日の小出先生。
『5/10/火★3号機・原子炉圧力容器の温度が上昇』その1。
『5/10/火★3号機・原子炉圧力容器の温度が上昇』その2。
「正気かどうか聞いてみて下さい、東京電力に」
小出裕章談。
*地球の長い午後*(2011.5.8)
「背信は、信仰のうちにあるわけでも、不信仰のうちにあるわけでもない。それは、信じてもいないものを信じていると言明することにあるのだ。それが道徳に及ぼす悪影響は計り知れない。というのも、頭のなかで嘘をつく習慣が社会のなかに生まれるからである。信じてもいないものに対して、専門家として信じているなどと公言するまでに腐敗し、心の貞操を売り渡してしまうならば、人はすぐにも他のあらゆる罪を犯すようになるだろう」
〜トマス=ペイン『理性の時代』〜
「<この惑星の生命維持組織に加えるどんな傷もほとんど永久に治療不能である>という科学的事実を認識しておく必要があるでしょう。この惑星を傷つけておいて、あとからそれを治すふりをする人間は、まさしく偽善者だということになります」
〜カート=ヴォネガット『パームサンデー』 〜
もう一月以上、テレビを観ていない。
原発事故によって、隠しだてしようもなくなった日本という国の科学リテラシーの次元の低さ、ロジックの貧弱さ、メディアの堕落ぶりというものに、時間を潰して接する、ということに耐えられないからだ。
本当に体に悪い。
今日の小出先生。
「5/6/金★「浜岡原発の全原子炉の運転停止を要請」を聞いて」(ラジオ放送録音)
100万年間管理し続けなればならない使用済み核燃料という死の灰。
100万年後の地球がどのような状態にあるか、それなりに妥当性があると考えられるような想像をめぐらせることすら不可能だ。
未来についてそうであれば、過去はどうか。
過去に遡れば、
100万年前には、六甲山はまだ海の底だった。
100万年後、地図上の日本はどうなっているのか、それが、100万年という時間のスケールだ。
誰がどのようにして、100万年間、死の灰を管理するというのか。
アホの極みだ。
*最近買った本・マンガ・DVD*(2011.5.5)
「知識を量産することはできない。知識は、ひとりひとりの人間がそれぞれの経験から、無関係なものと意味のあるものを分離し、価値判断をすることによって作りだされているからである」
〜セオドア=ローザック 〜
「<この惑星の生命維持組織に加えるどんな傷もほとんど永久に治療不能である>という科学的事実を認識しておく必要があるでしょう。この惑星を傷つけておいて、あとからそれを治すふりをする人間は、まさしく偽善者だということになります」
〜カート=ヴォネガット『パームサンデー』 〜
テロリストのドン、オサマ=ビン=ラディンが潜伏先のパキスタンでアメリカ軍によって殺害されたそうだ。
パキスタンの主権も何もなく、これは、報復テロに対するアメリカ国家の
報復報復テロ
だったわけだが、なんと、
「オサマ=ビン=ラディンは一端拘束された後、米軍兵士に処刑された」
という情報も流れている。
リンクして紹介するのは、アル=アラビアの報道だ。
情報源はパキスタン保安関係者だそうだ。
「邸宅から米急襲部隊ヘリに対する銃撃はなかった」
「オサマ=ビン=ラディンは一端拘束された後、米軍兵士に処刑された」
「邸宅から米急襲部隊ヘリに対する銃撃はなかった」
さあ、次は何が起きるのか。
次に何が起きるのかわからないが、次の次に起きることはわかる。
アメリカ合衆国の国家テロ、報復報復報復報復テロだろう。
☆☆☆☆☆☆
ゴールデンウイークも本を読む。
原子力発電所関連の本が特段に多い月となった。
最近購入した本リスト。
==================
・『隠される原子力・核の真実 原子力の専門家が原発に反対するわけ』
・『原発はなぜ危険か 元設計技師の証言』
・『原子炉時限爆弾』
・『反原発、出前します』
・『知事抹殺』
・『朽ちていった命 被曝治療83日間の記録』
・『(完全版)池澤夏樹の世界文学リミックス』
・『母アンナの子連れ銃軍記』
・漫画『特上カバチ!!25』
・漫画『ハナコ@ラバトリー
1』
・漫画『鈴木先生11』
・漫画『チーズスイートホーム
8』
最近購入したDVD。
==================
・『ペルシャ猫は誰も知らない』
・『彼女の消えた浜辺』
・『瞳の奥の秘密』
==================
ということで、5月3日の小出先生。
『福島第一原発事故:小出裕章
2011.5.3』(ラジオ放送録音)
*死よりも悪い運命*(2011.5.1)
「まあそんな訳で短大は建つわ、高校は出来るわ、50億円で運動公園は出来るわね。火葬場はボツボツ私も歳になってきたから、これも今、あのカネで計画しておる、といったようなことで、そりゃあもうまったくタナボタ式の街づくりが出来るんじゃなかろうか、と、そういうことで私は皆さんに(原発を)お薦めしたい。これは(私は)信念を持っとる、信念!」
〜1983年1月、福井県敦賀市長〜
「……えー、その代わりに100年経って片輪が生まれてくるやら、50後に生まれた子供が全部片輪になるやら、それはわかりませんよ。わかりませんけど、今の段階では(原発を)おやりになった方がよいのではなかろうか……。こいうふうに思っております。どうもありがとうございました。(会場、大拍手)」
〜1983年1月、福井県敦賀市長〜
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
50年後、100年後に生まれた子どもが何らかのハンデキャップをもっているかどうか、それはわかりませんよ。と1983年当時の福井県敦賀市長は発言した。
「100年経って片輪が生まれてくるやら、50後に生まれた子供が全部片輪になるやら、それはわかりませんよ。わかりませんけど、今の段階では(原発を)おやりになった方がよいのではなかろうか…。こいうふうに思っております。」
だそうだ。
「このように思っております」と、市長はその思いのすべてを市民に開陳した。
市長の言うとおりなのだとすると、この街に原発を誘致すれば、50年後、100年後に生まれてくる子どもたちは何らかのハンデキャップを生まれつき抱えるということがあるかもしれない。
その個々の子どもたちが抱えるハンデキャップの実態とは、図書館などで軽く調べただけでも、途方もない規模であることは想像できる。
そのような戦慄すべき事態が原発誘致と引き換えにする形で、個々の子どもたち、または自分たちの家庭なり地域の未来に待ち受けているのだと考えうるとして、その可能性とはどれほどのものか。
もしかしたら、生まれてくるすべての子どもに、何らかの障害があるかもしれない。半数かもしれない。
場合によれば、とてつもない被害状況が現出することもあるかもしれないが、結局は可能性だ。実際にためすわけにはいかないのだから、本当のことはわからない。
わからないものはわからない。
真実がわかるのは、50年後、100年後だ。
だとすると、いつまでも議論していても埒が明かないのではないか。恐れたって心配したって、どうせわからないのだ。というような乱暴な気分を背景にして、「100年経って片輪が生まれてくるやら」などという大根か何かを扱っているような市長の発言がつるつると飛び出す。
わからないものは存在していないということだ。ただちに健康に別状がないということは、心配する必要などない、ということと同じだ。と、このような途方もない楽観主義に論点はいきなりシフトし、短大、高校、運動公園、火葬場、タナボタ式の街づくりという目に見えるもの、決して裏切らないものだけを信じて未来を建設すべきではないか……とまあ、そういう演説を市長という立場の人間がぶちあげたわけだ。
市民はそれに、拍手大喝采で応えた。
映画「100,000年後の安全」予告編
強力すぎて、消すことのできない火。
*第9地区*(2011.4.27)
「どうしておれはこんなことをしたんだ? どうしておれはこんなことをしたんだ? どうしておれはこんなことをしたんだ? どうしておれはこんなことをしたんだ? どうしておれはこんなことをしたんだ? どうしておれはこんなことをしたんだ?
」
〜マイクル=ムアコック『この人を見よ』〜
「自業自得でない悲劇などありえない。全く自分の所為ではない不幸が次々に襲い掛かってくる芝居があったら、抱腹絶倒の大喜劇に違いない」
〜佐藤亜紀『バルタザールの遍歴』〜
3月11日以降、私は朝から深夜まで、時間が許す限り、原発事故を追いかけている。知り得る限りのすべてのディティールを知っておきたいと感じているからだ。
それにしても、もう1ヶ月以上がすぎた。
寝不足で頭がくらくらする。
先日、仕事のほうでとんでもない失敗をやらかしそうになって、あれは本当にヤバかった。
原子力資料情報室で、石橋克彦先生が出演。
『2011年4月26日
石橋克彦氏講義』(動画)
原子力資料情報室の嶋橋美智子さんのお話しが、少しだけ見やすくなった。
『嶋橋美智子さんのお話し』(動画)
おまけ。
いきなりだが。
タルコフスキーの傑作映画『鏡』から。
私は今、自分が『鏡』の世界に閉じこめられた幽霊になったような気がしている。
*俺には口がないそれでも俺は叫ぶ*(2011.4.24)
「大企業は資金も潤沢なのだから、ありがたくない研究結果に悪態をついている暇があったら、製品の安全性をチェックしたほうがよさそうなものだ。それに、企業が見逃したことを科学者たちがチェックしたからといって、それに文句をつけるのはお門ちがいというものである。いったい企業は、利益を失うぐらいなら人を殺したほうがいいと言うのだろうか。不確かなこの世界では、誤りを犯すのは避けられないことだ。そうであればこそ、顧客や大衆を守ろうとする行動に横やりを入れるべきではない。ついでに言っておくと、こうしたケースを見る限り、いったい自由企業には自己管理能力があるのかと疑いたくもなる。公益に関わる問題に対しては、何らかの政府介入があるべきではないだろうか」
〜『カール・セーガン 科学と悪霊を語る』〜
「バーソロミューとブレイクスピアーが論じているように、大事なのは「帝国主義に真の敵として立ち向かう批判的なコスモポリタン・プロジェクトの一部分として人権政治を再興すること」であり、私ならそれに加えてネオリベラリズム自体に立ち向かうこと、と言いたい。」
〜デヴィッド=ハーヴェイ『ネオリベラリズムとは何か』〜
孫正義氏、国家的英雄になる。
『自由報道協会主催 孫
正義 記者会見』(動画)
「我々の子どもたちに対して、孫たちに対して、後々の人たちに対して、(真実を知って行動しないのは)罪だと、私は心底思うんですよね」
「これだけの事故があって、字も読めて、目も見えて、テレビが見れて、人の話が聞けて、なおかつ、いつまでも無知のままでいると、これも問題だ」
「これ(原発問題)は、もう国民的に重大な(課題)、我々が(未来の世代に対して)負っている責任だ」
「小学生が年間(被曝限度)20ミリ(シーベルト)で許せって、許せるか、この野郎ぉ!」
(ノ▼曲▼)ノ このやろう
「なんで、子どもへの配慮がゼロなんだ! たいがいにせえ、この野郎ぉ!」
「わしに一回、国会でしゃべらせろ!」
よし! わかった! あんたがそこまで言うなら、私も力を貸そうじゃないか!
おまけ。
「Vitimas do Acidente nuclear de Chernobyl. Nuclear accident」
「これだけの事故があって、字も読めて、目も見えて、テレビが見れて、人の話が聞けて、なおかつ、いつまでも無知のままでいると、これも問題だ」
*炉心溶融は水蒸気爆発の夢を見るか*(2011.4.22)
「ウランは猛毒の放射能であり、そのような物質を環境に撒き散らす行為は、ただそれだけの理由で禁止されるべきだと、私は思います」
〜小出裕章『隠される原子力・核の真実』〜
「このときの被曝線量は、電力会社が設定した一週間分の基準である三〇〇ミリレムをかるく突破したと思われた。しかし、村居氏は、ポケット線量計の値を、入域のときに一二〇ミリレム、退域のときも一二〇ミリレム、と記入した。つまり、被曝ゼロである。その後、村居氏は、異常な倦怠感、関節の痛み、高熱に悩みつづける。(中略)
先の村居氏のような例といい、なぜこのように被曝線量をいつわってまで働くかといえば、被曝労働にはさまざまな名目で賃金が上乗せされるためで、被曝線量が基準に達してしまうと賃金の安い職場にまわされてしまうからである。」
〜天笠啓祐『原発はなぜこわいか』〜
「ここでも大きな問題は狂気ではなく、ひとびとの脳があまりにも大きすぎる上に嘘つきなので、実用にならないことだった。
」
〜カート=ヴォネガット『ガラパゴスの箱舟』〜
今日の小出先生。
『福島の子どもたちをなんとか被曝から守ってあげてほしい。しかしどうすればいいのか』(音声)
放射能汚染というものがどれほどに危険なものなのかを知る意欲を持たないまま、「私は多くを求めない、ただ幸せになりたいだけなんだ!」という、だだっこのようなふるまいに及ぶという、無知と子どもっぽさにあぐらをかく社会。
結局、その途方もない歪みは社会的弱者が引き受けることになる。
つまり、子どもたちがその無垢な命で、代償を支払う。
今日の後藤先生。
スリーマイル事故のおもひで。
『後藤政志氏、スリーマイル原発解説』(動画)
おまけ。
見えないものは存在しないのと同じ、という楽観主義のどん詰まり。
『Apes! Not Monkeys! 本館』さんから
『載らないから安心して』
放射線量のデーターはない。
だから安心していただける、という考え方。
*被曝、東海村の場合*(2011.4.19)
「基底層の細胞の染色体が中性子線で破壊されてしまい、細胞分裂が出来なくなった。新しい細胞が生み出されることなく、古くなった皮膚は剥がれ落ちていった。体を覆い、守っていた表皮が徐々になくなり、激痛が大内を襲い始めた」
〜NHK「東海村臨界事故」取材班『被曝治療83日の記録』〜
「二十七日目、恐れていた大量の下血が始まる。内視鏡で見ると、腸の粘膜がなくなり、消化も吸収もできない状態。体表の皮膚の水ぶくれが破れて、体液、血液が滲み出すようになったばかりか、新しい表皮ができてこない。妻と妹さんは「もうさわれるところがありませんね」と寂然となる。皮膚から滲み出す水分は一日2リットル(!)を超える。五十日目からは、五つの大学から培養皮膚を取り寄せて移植を開始。妹の提供皮膚の培養分を含めて約七十枚も移植するが、生着しなかった。五十九日目、心停止。蘇生に成功するが、腎機能ほぼ廃絶、肝不全に陥る。六十三日目、細菌などを攻撃する免疫細胞マクロファージが正常な赤血球や白血球を食べてしまう原因不明の血球貪食症候群が起きているのを確認…
…。」
〜NHK「東海村臨界事故」取材班『被曝治療83日の記録』〜
「大内は全身をガーゼで覆われ、外から見える体の部分は足の先だけだった。妻は言葉を語れない大内のそばに寄り添って、手をさわったり、包帯から出ている足先をさわったりしていた。ときどき笑いながら語りかけていた。看護婦のだれ一人として大内の前で泣く妻の姿を見たことがなかった。」
〜NHK「東海村臨界事故」取材班『被曝治療83日の記録』〜
NHK「東海村臨界事故」取材班『被曝治療83日の記録』を購入、そして読む。
私の記憶では岩波書店から発行されていたはずだが、一度廃刊になり、新潮社が引き受ける形で文庫化されていた。
今回購入したのは、新潮社の文庫判だ。
文庫判のタイトルは『朽ちていった命』となっており、『被曝治療83日の記録』はサブタイトルになっていた。
1999年の9月に起きた東海村JCOの臨界事故で高レベルの放射線を浴び被曝した作業員・大内さんの83日間にわたる治療の記録だ。
あの事故が起きたとき、私は東京の世田谷に暮していた。
再臨界事故が起きた、というニュースの第一報を外出中のどこかで聞いたとき、すでに私は、東京を脱出すべきかどうか、真剣に考慮していた。
核燃料を加工するという作業のさなかに、正規のマニュアルを無視して、バケツでウランを容器に移し替えていた、などという信じがたい非常識な振る舞いの末に、核分裂が起き、作業に従事していた作業員、少なくとも二名が被曝したという。事故現場には誰もそばに近寄ることすら出来ない、というニュースだった。
仕事も部屋も放り出し、とにかく遠くへ逃げなければいけないようだ、とその時の私は感じた。
しかし夜になり、テレビはお笑い番組などを流し始めた。
再臨界事故を無視して、お笑い番組を流すテレビ局と、それをお茶の間から観賞する市民、という存在に、私は絶句した。
それが、私にとっての、東海村臨界事故のほぼすべてだ。
被曝した大内さんにとっての事故は、そこからが始まりだった。
事故によって被曝した大内さんの染色体は放射線により文字通り一瞬でバラバラに破壊された。
入院当初は健康な人と何ら変わらないように見えた大内さんだが、皮膚表面はもちろん、造血機能・造血幹細胞が死滅。大量の下痢に下血、皮膚からの体液の滲みだし、輸血・投薬の繰り返し。皮膚の死滅、皮下組織がむき出しになり……。
東海村の事故で核分裂を起こしたウランは、わずか1000分の1グラムだったという。
さて。
今日の後藤さん。
『東京電力が発表した『福島第一原子力発電所・事故の収束に向けた道筋』について』(動画)
*海を失った男*(2011.4.16)
「聡明な若者で、もう少年ではなく、病んだ男を助けてやりたいと思っているきみは、あの内臓にぐっとくるさむけについて、あの手を伸ばしている、目に見えない、まわりを取り囲む残忍なアメーバーについて、知っていることを何もかも教えてやりたいと思う。きみはそれについては何でも知っている---聞いてくれ、ときみは彼に向かって叫びたい。あのさむけなんか気にするな。それが何かさえ知っていればいい」
〜シオドア=スタージョン『海を失った男』〜
「子どもの背中に達するほど、女性の歯が喰い込んでいるということは、何を意味するのか。山上医師の眼に、恐怖で抱きついてきた子どもをしっかり抱きしめたまま、堕ちて行った母子の姿が、ありありと映った。おそらく、母の体は、墜落時の衝撃で、吹っ飛び、歯だけが、子どもの背に残ったのだろう」
〜山崎豊子『沈まぬ太陽』〜
放射能が漏れ出す以前の私たちの生活、というものも確かにあって、福島の原発4機から同時多発的に放射性物質がもれだすなどということなど知りもせずに生きてきた。
一秒先の未来さえ知りようのない私たちは、福島の原発事故が起きたことをニュースによって知るまで、それは単なる可能性でしかなかった。
それまでの、つまり、3月11日までの私は、まるで小学校に上がる前の子どものように現実と可能性の区別がつかず、
原発事故がまるで現実に起きるかのように、大変だ大変だと騒ぎたてながら生きてきた。
そして、2011年3月11日、可能性が現実の皇帝へと格上げとなった今も、事態は変わらない。
大変だ、大変だと私は騒ぎ続け、その私に対して周囲からは、
「そんなことばかり考えて生きているのでは、さぞかし大変でしょう。もっと前向きに、楽しい人生を歩まれたらどうなのですか?」
などというお言葉をいただく。
目に見えないものは少なくとも目に見えるまでは存在しないのと同じなのだから、あとは気持ちの持ちようが大切なのだ、というたぐいのお説教、もしくはレクチャーを受け続けるという日々に変化はなかった。
放射能は目に見えず、味もせず、感じることも出来ないという事実を逆手にとり、本当のことは誰にもわからない、などと都合の悪いことは徹底的に拒絶して、明るく楽しく今日も生きていく。
生きていくべきだ。
生きていこう。
しかし残念ながら、私にはとてもそんな生き方は無理だ。
これは倫理上の問題である。
オープニングのコントがわが意を得たり、の動画だ。
『牛乳が飲みたい_原発・勇気ある撤退【1/3】』
『牛乳が飲みたい_原発・勇気ある撤退【2/3】』
『牛乳が飲みたい_原発・勇気ある撤退【3/3】』
この日の小出先生は、若い。
福島の原発事故など知りようもない若い小出先生が、まるで原発事故が本当に起こるかのように、私たちに語りかける。
若い小出先生の側からこちらを見れば、私たちは未来人だ。
タイムマシンがあれば、私は過去の小出先生にこう言うだろう。
「あなたの言うことは本当でしたよ」
おまけ。
原発反対替え歌『ずっとウソだった』を厚生労働省パンフレットつきでごらんください(動画)。
教科書もCMも言ってたよ
原子力は安全です。
おれたちを騙して
言い訳は想定外。
懐かしいあの空。
ずっと嘘だったんだぜ。
風に舞う放射能は
もう止められない。
何人が被曝すれば
気がついてくれるの?
*レベル7と今日の小出先生*(2011.4.13)
「メディアは浄化プロセスの進行係である。メディアは、理想的な政治的活動を、理解しやすく論じる価値のあるものにし、政府の誤った行動を暴き、社会の自然回復へと導く。メディアは、民主主義において、本質的部分を形成するような重大な役割を担っているのだ」
〜マルセル=ローゼンバッハ/ホルガー=シュタルク『全貌ウィキリークス』〜
「恐怖の連続。それが奴隷の一生だ」
〜映画『ブレードランナー』〜
原発事故さて、レベル7記念に、恐い話を。
『旧ソ連諸国の平均寿命の変化図』
ソ連という国の86年までの平均寿命は右肩上がりだったが、チェルノブイリ事故を境に下降、事故発生から8年後の94年にピークに達する。
それと比例して白血病など早発ガンが激増。
これから日本もこうなる。数百万人が死ぬのであります。
まあ、日本の人工密集度からすれば、犠牲者は一千万を超えると私は思っていますけど。
私の見当違いであることを願っておりますが、これは途方もないことだ。
そして、
……大丈夫大丈夫サギ、ここに極まれり、だ。
ただちに健康に被害はない、チェルノブイリと同列視するなどとんでもない、などとさかんに喧伝していた学者や知識人は、国民にウソの安心を植え付ける以外のなんの役割も果たすことはなかった。
彼らは、国民に対して安心感と楽観論をふりまくこと以外の使命を持たないから、ウソを振りまくことになんの罪悪感も感じないのかもしれない。
風呂の栓を抜いたように、すべてを巻き込みながら破局へと向かいつつある現状のさなかに、ありもしない明るい未来を指し示す人々。
事故の当初から事態は最悪のレベル7だとうちわで知りつつ、無知蒙昧な国民のためと心に決め、大丈夫詐欺に及ぶのだ。
そしてさらに怖い話。
『チェルノブイリ近郊では20〜25歳の生存者は少ない』
「内部被爆で死んでいるのは、当時0歳から5歳までの子どもたちです。
甲状腺に放射能を溜めこんで、その後10年20年して発ガンしました。だからチェルノブイリ近郊では20歳から25歳の人口はみんな死んでしまってほとんどいません。生きている人も、チェルノブイリネックレスと言って、甲状腺癌の摘出手術跡を、若い女性も含めて、みな(首に傷跡を)持っています。」
4月12日の小出先生。
『2011/4/12/火★最悪の「レベル7」引き上げの意味』
いよいよ、覚悟を決めなくてはならないようだ。
おまけ。
『vanacoralの日記』さんが、高円寺反原発デモに参加なさっていた。その報告。
『4.10高円寺反原発デモに参加しました』
*貨幣の権力と今日の小出先生*(2011.4.11)
「民主的形態を打ち固める方法は唯一です。それは表現の自由の貨幣の権力からの解放です。情報の複数性がそれ自身を資本化するための手段を代表的に表現することなど、あってはならないことなのです」
〜トニ=ネグリ『チュニジアの友への手紙』〜
「しかしそれでもなお、ぼくには思えるのです。もっとも肝心な、そしてほんとうのことをぼくは知っている、しっかり知っていると」
〜チェーホフ『『三人姉妹』〜
東京都民の選択は原発推進派知事“イシハラ”の続投となった。
日本の民主主義の問題点を一言で言い切るとすれば、それは、
金で買える
ということに尽きるわけだが、それにしても、ひどいなこれは。
金で買える民主主義、といっても、露骨に票を買う人間など今どき少ないだろう(いないと言えないのは新聞を読んでいるとわかる)。だが、民意は金で買えるのだ。少なくともこの日本では。
さて。
今回の統一地方選挙結果を、どう分析するか、新聞やテレビを通じて、それをなりわいにする人々がさまざまなことを言うのだろう。
誰が何を言うにせよ、選挙結果をふまえて、かなりはっきりした傾向を私は認めざるを得ない。
私たち国民は、独裁政権を欲している。
橋下徹の私党である「大阪維新の会」が大圧勝する理由など、独裁の実現以外の何があるというのか。
彼等には政策もなにもなく、そこにあるのは、独裁的ふるまいというものだけであり、それをこそ大阪府民は支持した。
このように書くと気を悪くする人が出てくるのだろうが、本当のことなのだから仕方がない。
そして私は、愚民論を語っているのではない。
民主主義をどう考えるのか、市民要求とは何なのか、私たちは根本的なところから問い直すべきだ。
日本から世界へ、「ごめんなさい」
4月10日の小出先生。
『京都大学原子炉実験所 小出裕章氏に聞く』
そして、東京はプチエジブトとなった。
健全なる民主主義の一形態だ。
人間としていま生きている実感というものを、このような時空間の中に感じるように私たちは生まれついている。
*今日の小出先生*(2011.4.9)
「われわれにはひとつの義務があると思う―われわれを生みだした種族に対して、また、われわれがいまから生みだせるかもしれない子供たちに対して。つまり、最後まであきらめずに努力を続ける義務だ。
諸君の大部分にとっては、生きつづけること、正気をたもちつづけること、それだけでいい。それでさえ、人間がこれまでに企てた中で最も困難な仕事だということは、わたしにもよくわかる。これからの航行に関係した専門分野に属する乗組員と科学者は、それに加えて、船内作業をつづけ、将来の事態に準備をしなければならない。なまやさしい仕事ではない」
〜ポール=アンダースン『タウ・ゼロ』〜
「みなさんは、なにが最終的にこの星を滅ぼすか知っていますか?
真剣さがまったくないことです。実際になにが起こりつつあるか、つぎになにが起ころうとしているか、そもそもわれわれはどうしてこんな泥沼にのめりこんだのか、そういうことにだれもまったく無関心なのです」
〜カート=ヴォネガット『ジェイルバード』〜
京都三条ラジオカフェから、4月8日の小出先生。
『【福島原発】福島原発事故による影響について
汚染水海への流出は止まった? 原子炉は・・・ 京都大学 原子炉実験所 助教 小出裕章先生にきく』
小出先生、東京を放棄しなければならない可能性に言及。
エダノ氏の最初の会見を聞いた瞬間から、私の神経はすっかりまいってしまったままだ。
原発の冷却機能が失われました、しかし安全です、などというふざけた物言いに対して
「ああそうなのですか」
と安心してみせるほど無知ではなかったからだ。
あの瞬間以来、ぐっすり眠る、というすら不可能な日々がつづいている。
おまけ。
孫正義氏、後藤正志氏、田中三彦氏、三者会見のダイジェスト版。14分半です。
10万年先まで、原発反対。
*猫のゆりかご*(2011.4.6)
「まるでSFですね」
〜森奈津子『地球娘による地球外クッキング』〜
「次は失敗しません ご期待ください」
〜幸村誠『プラネテス』〜
孫正義氏、日本滅亡の危機に直面して改心する。
『田原総一朗X孫正義対談〜東日本大震災について』
(動画)
3時間近くある大長編だが、見どころは2時間26分目あたり。
御用知識人の田原が、逃げ出した瞬間だ。
そして、田原がいなくなってからの孫氏、後藤氏。田中氏の話は、これは必見だ。
ぜひごらん下さい。
あとこちらも。
小出先生のラジオ出演から。
『深刻な事態が続く福島第一原発』25日
(音声のみ)
「何と汚い政府か」
「非情な政府ですね」
小出先生の声が怒りと悲しみで震えています。
続き。
『深刻な事態が続く福島第一原発』30日
続きの続き。
『深刻な事態が続く福島第一原発』31日その1
『深刻な事態が続く福島第一原発』31日その2
続きの続きの続き。
『深刻な事態が続く福島第一原発』4月1日その1
『深刻な事態が続く福島第一原発』4月1日その2
続きの続きの続きの続き。
『深刻な事態が続く福島第一原発』4月4日
田中真紀子の自己アピールに終始するぺしゃりに対して、小出先生はぴしゃっと叩いて一瞬絶句させた。
いま政治家が問われているのは、リーダーシップの有無などでは当然なく、これから私たちはどう生きていきたいのか、つまり、原発を廃止する意志が問われているのだ。
その点についていっさい発言しない田中真紀子は、小出先生の目には映っていないはずだ。
*原発と個人*(2011.4.3)
「恐怖の連続。それが奴隷の一生だ」
〜映画『ブレードランナー』〜
「バーソロミューとブレイクスピアーが論じているように、大事なのは「帝国主義に真の敵として立ち向かう批判的なコスモポリタン・プロジェクトの一部分として人権政治を再興すること」であり、私ならそれに加えてネオリベラリズム自体に立ち向かうこと、と言いたい」
〜デヴィッド=ハーヴェイ『ネオリベラリズムとは何か』〜
白血病のため二十九歳で亡くなった嶋橋伸之さんの母美智子さんが被ばく労働について語る。
めしを抜いても、ぜひ観てくれ。
これは大量殺人である。
『たかズム』さんから、
『放射能犯罪人たち』
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