* 判決が下された *(2012.8.26)
「交渉を始めるように努めなければならない。暴力の前に、できれば暴力の代わりに、また暴力の後でも、対話のための場を設定する試みがなされるべきである。言語道断なことだと考える者に会うべきである。そして、なぜ彼らがそれをしたのかを理解しようとし、その行為を別の観点からみる努力をし、共通の基盤を探す試みをすべきである。そうしなければ、どうやって暴力を止めることができるだろうか。敵対する両者がお互いの状況をまったく別々の解釈に基づいて突き進んでいけばどうなるだろうか。暴力を防ぐという観点からは、アメリカは、爆弾よりも対話によってこそ自国を守ることができるだろう。
そのような対話からは何も生まれてこないかもしれない。しかし、両者が武力に訴える前に互いにどう考えているかを知る試みは有効であるかもしれない。おそらく、両者は徐々に、相手の言うことも一理あると考えるようになるだろう」
〜ニルス=クリスティ『人が人を裁くとき』〜
「もしも、連帯した社会で暮すことの価値を信じるなら、刑事施設の成長を妨げなければならない。
刑事施設が成長することは、社会の連帯に対する重大な脅威である」
〜ニルス=クリスティ『人が人を裁くとき』〜
「最近の判決がおかしくなっている」と神保哲生さんがおっしゃっておられます。
というと、私の周囲の人は、
「本当だ、凶悪犯罪には、もっと厳罰で対応すべきだ!」
というような反応が返ってくるのでありますが、そうではなくて。
まずは、百聞は一見に如かず。
神保さんのお話を聞いていただきましょ。
『「最近の判決がおかしくなっている」神保哲生のワールドレポート 』
そういえば。
77人が殺害された史上最悪のテロ事件、
ノルウェー・オスロ連続爆破銃撃事件の犯人ブレイビク被告に禁錮21年の有罪判決
が下された。
死刑どころか、無期懲役でもないなんて、こんなん、刑が軽過ぎる!と思われる方も、多いのではなかろうか。
私は、この種の犯罪を厳罰化によって抑制できるとは思わないし、その他の理由もあって、今回の判決には、とりあえずほっとしている。
村野瀬玲奈さんが私の思いをそのまま、書いて下さっているので、御紹介。
『村野瀬玲奈の秘書課広報室』 から
『ノルウェーの示す凶悪犯罪への姿勢 』
http://muranoserena.blog91.fc2.com/?no=3679
「被害者の方とその遺族の方々に哀悼の意を表します。それと同時に、犯人に対する憎しみを心に持ちながらも、これだけの犯罪に対してこれがノルウェーの決然とした司法的意思であることを、私はまずここに記録しておきたいのです。」
「寛容」というのは甘さのことではなく、異質なものと歯を食いしばって共存していこうとする姿勢、暴力で物事を解決しようとしない決然とした意思のあり方であるのだということが今回のノルウェーの判決から理解できます。ノルウェーは「犯人を死刑にしないことによって犯罪と闘う」ということを意識的に選んだ国なのだということです。」
……。
イエス、イエス。
* オリンピックよりも小出さん&後藤さん *(2012.8.14)
「戦後になると、マサオ・ミヨシによれば、日本の知識人の大半は、自分たちの新しい使命の本質を、天皇制イデオロギー(あるいは国体イデオロギー)の解体だけではなく、西欧と肩を並べられるリベラルで個人主義的な「主体性」の構築であると自覚するようになるが、しかし皮肉なことに、ミヨシによれば彼らは「ものを買う行為だけが個人という存在を保証し勇気づけてくれる究極的に空疎な消費社会」にまきこまれてしまう」
〜E=W=サイード『知識人とは何か』〜
「現代の知識人は、アマチュアたるべきである。アマチュアというのは、社会のなかで思考し憂慮する人間のことである」
〜E=W=サイード『知識人とは何か』〜
デジタル難民の私は、オリンピックがどうなっているのか、ほとんどまったく知りません。
え、オリンピック終わったんですか?
がーん。
しかし、オリンピックは終わっても、福島第一原発事故は、収束しない。できない。
というわけでオリンピックそっちのけで、8月12日に行われた、小出裕章先生の講演をご紹介します。
『脱原発社会をめざす労働者集会(小出裕章氏の講演) 』
次は後藤政志さんの講演。
『後藤政志講演会
芝浦工業大学 大宮祭 福島第一原発事故から何を学ぶかー元原発設計技術者の視点ー 』
やはり、小出先生と後藤さんのお話は、私にとって、特別だ。 社会正義の基準点というものを、私は、彼らのお話の中に確認する。
* 最近読んだ本など 会*(2012.7.30)
「我が亡き後に洪水は来たれ! これが、すべての資本家とすべての資本主義国の合い言葉である。それゆえ資本は、労働者の健康と寿命には、社会によって強制されないかぎり考慮しようとしないのである。肉体的および精神的な衰弱や早死にや過度労働の責め苦に関する不平不満に対して資本はこう答える。この苦しみはわれわれの楽しみ(利潤)を増やすのに、どうしてそれがわれわれを悩ませるというのか? だが、事態を全体として見れば、このことは個々の資本家の善意や悪意にもとづいているのではなく、自由競争のもとでは、資本主義的生産の内的諸法則が個々の資本家に対しては外的な強制法則として作用するのである。」
〜デヴィッド=ハーヴェイ『資本論入門』〜
「「資本主義は「国家債務危機」以来、とんでもない光景を創り出している。公的債務の危機から脱するために、市場、格付け会社、専門家などが、国家に押しつけている「経済的合理性」の規範は、私的債務の危機(これが公的債務の危機の起源である)を引き起こしたものと同じものである。銀行、年金基金、機関投資家などは、なお膨大な不良証券---これはクレジットによる収入や賃金の代替政策によって生まれたものだ---を所有しながら、公的収支の是正を国家に要求している」
〜マウリツィオ=ラッツァラート『〈借金人間〉製造工場』〜
体調が悪いので、なかなか日記を書くところまでもいかない。
本をちびちび読んでます。
デヴィッド=ハーヴェイ『資本論入門』を、もう一年くらいかかって読んでいる。
「入門」をうたいながら恐ろしく難しいが、格闘する価値のある素晴らしい本だ。
**
『SFマガジン』7月号を購入。
海外SF短編がまったく掲載されていなかった。たまたまなのか、買い付ける予算がなくなったのか。
最近購入した本リスト。
==================
・ 『科学とは誰のものか』
・『隠して核武装する日本』
・『オリエンタリズム(上下)』
・『〈借金人間〉製造工場』
雑誌
・ 『SFマガジン』 (SF)
・ 『将棋世界』
・漫画 『ちはやふる16』
・漫画 『特上カバチ!!30』
==================
* 「さようなら原発10万人集会」連帯奈良県集会 *(2012.7.15)
「無実の人間を監禁しないと存続できないようなら、そんな体制はこわれてしまえばいい」
〜フィリップ=K=ディック『少数報告』〜
「ほかの道を作るべきである。オルゴレインもカルハイドもいまたどっている道をこれ以上進むべきでも退くべきでもない。別の道を進んで悪循環をたちきらねばならぬ」
〜アーシュラ=K=ル=グウィン『闇の左手』〜
すみませーん、今日の明日ですが、JR奈良駅前広場でこういうのあります
『「さようなら原発10万人集会」連帯 奈良県集会・パレードへの参加のお願い』
名称 「さようなら原発10万人集会」連帯 奈良県集会・パレード
日時 7月16日(月) 集合時間 午前10時30分
場所 JR奈良駅前広場
参加規模 300人をめざしています。
行動 参加団体、個人のアピール
関西電力奈良支店への申し入れ
パレード開始 午前11時10分
です。
よかったら、来てね。
というか、ぜひ来て下さいね。
* ラジオドラマ版『ブラジルから来た少年』 *(2012.6.26)
「正当な怒りを抱いた人々がなぜ極右に動員されてしまうのか、私の子どもの頃、産業別労働組合(CIO)をはじめ建設的な活動があった時代に人々を集めたような勢力になぜ結集しないのか、その理由を自らに問いかけてみることが大切です」
〜ノーム=チョムスキー『アメリカ国民の怒りはどこへ向かっているか』〜
「アメリカ合衆国は、それが社会的疾患と認められ、人びとがそれをなくそうと戦うようになるまで、百年近くも奴隷制度を続けてきました。想像できますか。これはアウシュビッツといい勝負ではないでしょうか。ほかの人間を所有し、牛馬のように彼らを扱っておきながら、世界の国々に向かって、アメリカは自由のたいまつだとよくもほざけたものです」
〜カート=ヴォネガット『死よりも悪い運命』〜
インターネットで見つけた、ラジオドラマ版『ブラジルから来た少年』。
大風呂敷を広げまくるサスペンスですぜ!
ラジオドラマ 青春アドベンチャー 原作:アイラ・レヴィン 訳:小倉多加志 脚本:高橋いさを 演出:川口泰典 出演:吉田鋼太郎(=リーベルマン)
海津義孝(=メンゲレ) 武岡淳一 舵一星(=少年たち) ほか
「ラジオドラマ版『ブラジルから来た少年』」
http://video.google.com/videoplay?docid=-5222517429313922075
ラストが良いのです。
ヒットラーを生み出すのは何か、そして、ヒットラーを押しとどめる物は何か。
ぜひ、聞いてみてください。
* エジプトのショックドクトリン *(2012.6.18)
「わたしが示唆しようとしたのは、知識人個人にとって、人間の悲惨さと抑圧に関する真実を語ることが、所属する政党とか、民族的背景とか、国家への素朴な忠誠心などよりも優先されるべきだということである。知識人の自主規制、リスクを意識しての沈黙、愛国主義的な大言壮語、そうして過去をふりかえり過去のラディカルな自分を否定する芝居がかった転向---こうしたことほど、知識人の公的活動の信用を傷つけるものはないのである」
〜E=W=サイード『知識人とは何か』〜
「グラムシによれば有機的知識人は階級なり運動と、それも、知識人を利用して利害を組織化し、権力を手に入れ、支配権の拡張をはかる階級なり運動と直接むすびつく。まただからこそ、グラムシが有機的知識人論のなかで述べているように、「資本主義の企業家は、そのかたわらにはべらせるべく、産業技術者、政治経済専門家、新たな文化編成や新たな法制度の立案者を生み出す」のである。現在、広告代理店や宣伝担当のエキスパートたちは、洗剤会社なり航空会社なりが市場をよりおおく確保できるよう、さまざまなテクニックをひねりだしているところであり、さしずめ彼らこそ、グラムシの定義による有機的知識人といえるだろう」
〜E=W=サイード『知識人とは何か』〜
体調悪くて事実上寝込んでます。
いや〜。
つらいですね。
なんにもできないので、サイードの本を読んでます。
せっかくですので、『デモクラシーナウ!』さんから動画。
『エジプトのショック・ドクトリン?
ムバラク後の経済危機と混迷の大統領選挙 』
です。
* 最近購入した本など『闇の国々』とか *(2012.6.3)
「われわれにはひとつの義務があると思う―われわれを生みだした種族に対して、また、われわれがいまから生みだせるかもしれない子供たちに対して。つまり、最後まであきらめずに努力を続ける義務だ。
諸君の大部分にとっては、生きつづけること、正気をたもちつづけること、それだけでいい。それでさえ、人間がこれまでに企てた中で最も困難な仕事だということは、わたしにもよくわかる。これからの航行に関係した専門分野に属する乗組員と科学者は、それに加えて、船内作業をつづけ、将来の事態に準備をしなければならない。なまやさしい仕事ではない。
だから心の平安をたもってくれ。内部の平安を。どのみち、それが実在する唯一の平安だ。外部の戦いはまだまだ続く。降伏のことはいっさい考えずに、その戦いをつづけよう。」
〜ポール=アンダースン『タウ・ゼロ』〜
「ファンタジーを嫌う人間が、科学に対しても同じように退屈や嫌悪感を抱くことがしばしばある。こういう人間は、ホビットも恒星状天体も好きではない。どうも相性が悪いのだ。複雑なこと、遠く隔たったものはどうでもよいのだ。ファンタジーと科学とのあいだになんらかの関係があるとすれば、それはきっと根本的に審美的なものであろう」
〜アーシュラ=K=ル=グウィン『夜の言葉』〜
『闇の国々』というフランスの漫画を買った。お値段が四千円を超えていた。
漫画で四千円かあ。
色んな意味で、すっごいボリューム。言葉の密度も半端ない。こういう言葉の密度の感覚は、日本の漫画ではまず体験できない。
ま、がんばって読みます。
漫画話続き。
松田洋子先生の『ママゴト』に土肝を抜かれて、他の作品も購入。『まほおつかいミミッチ 』全3巻と、『赤い文化住宅の初子』だ。
最近購入した本リスト。
==================
・ 『感性の限界』
・『知識人とは何か』
・ 『岩波科学 5月号』
・ 『SFマガジン』 (SF)
・漫画 『ママゴト2』
・漫画 『闇の国々』
・漫画 『赤い文化住宅の初子』
・漫画 『まほおつかいミミッチ1 』
・漫画 『まほおつかいミミッチ2』
・漫画 『まほおつかいミミッチ3 』
・DVD 『アンダーグラウンド』
・DVD 『ヒロシマ・ナガサキ』
・DVD 『ヒバクシャ』
・DVD 『フロウ』
==================
* ネット時代の民主主義 *(2012.5.29)
「アメリカ建国は、人民は危険であるというマディソン主義に基づいていました。権力はジェームズ・マディソン〔1809-17年の米大統領〕の言う「国家の富裕層」に委ねなければならない。なぜなら、彼らは財産とその所有権を尊重しており、なんとかして分裂させる必要のある「多数派から、裕福な少数派を保護する」よう願っていた」
〜ノーム=チョムスキー『すばらしきアメリカ帝国』〜
「そして市場が情報交換のメディアになるとき、市場は消費者の需要の充足と利潤獲得が目的で、住民の啓発や教育を目指すのではない。市場で取引される情報はエンターテイメントである。したがって情報市場は理性的な公共の会話の育成には役立たない。なぜなら情報市場の性格からして、理性と公共圏の双方を破壊しがちだからである。一方、民主主義は理性的な公共圏を必要とするので、情報市場は民主主義を破壊する傾向にある」
〜エド=デーンジェロ『公立図書館の玄関に怪獣がいる』〜
「国連の世界人権宣言第十九条にはこう定められている---「すべての人は、意志及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見を持つ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報および思想を求め、受け、及び伝える自由を含む」
〜マルセル=ローゼンバッハ ホルガー=シュタルク『全貌ウィキリークス』〜
『デモクラシーナウ!』さんから。
『ネット時代の民主主義 オンラインの自由を求める世界的な闘い 』
「市民はデジタル空間で何を見ることが出来、何にアクセス出来、何を公表し送信することが出来るのか。その権限を企業や政府が握り、説明責任を負わずに濫用しても、市民には歯止めがきかない──このままでは、そんな未来が生まれかねません。iPhoneで権力者の神経を逆撫でしないよう、先回りしてコンテンツを規制したかに見えるアップル、公式に何の告発も受けていないウィキリークスとの取引を断絶したアマゾン、ユーザーのプライバシーを危機にさらしたフェースブック、180日以上前の電子メールなら政府がいとも簡単にアクセス出来る現行法─企業による市民の自由の侵害の具体的な例を次々にあげながら、マッキノンは「インターネットの時代に民主主義が生き残ることを望むのなら、インターネットが必ず民主主義と矛盾しないかたちで進化するよう、働きかけなければならない」と市民による闘いの必要を説きます」
だそうです。
もうひとつ、『デモクラシーナウ!』さんから。これは必見。
『『帝国の収穫』 フアン・ゴンザレスが詳細に描く米国ラティーノの歴史 』
「ゴンザレスは、米国にとって移民は「帝国の収穫」だと言います。米国という帝国は移民を必要としているのであり、移民はその要求に応えているのだと。恒久的に低賃金労働を支えているのは主にメキシコからの移民です。アリゾナ州の過激な移民排斥法やメキシコ国境の軍事化、ひいては無届移民の世帯に生まれた若者を軍隊にリクルートしようというドリーム法に至るまで、米国の移民政策は常に時代の要求に大きく影響されながらも、特権層の利益を守るという目的は一貫しているようです。」
だそうです。
*ドキュメンタリー映画『デトクラシー』*(2012.5.21)
「ブルジョワジーは市場の観点からは十分立派な科学をつくり出したかもしれないが、彼らは、このシステムが労働過程の観点からどのように運動しているのかを理解していないし、ある程度理解した場合には、端的にそれを隠蔽したいと思っている。彼らは労働者にこう語ることに確固たる利益を有している。すなわち、労働は、諸君が市場に持ち出す一生産要員に過ぎないのであり、この諸君の貢献はその時々の賃金相場にもとづく正当な報酬によって報われているのだ、と。彼らは、労働が、自然の変革における造形的で流動的で創造的な火であり、資本主義を含むあらゆる生産様式の中核に位置するということを認めることはできないだろう。したがって、労働者がすべての価値---もちろんのこと資本主義的利潤の源泉である剰余価値を含め---を生み出すとして資本家が労働者を賞賛することなど想像を絶することである」
〜デヴィッド=ハーヴェイ『資本論入門』〜
「政治家が国民に選ばれた者としての責任を放棄し、それを組織的に外部委託しようと決断すれば、その影響は一つの政権をはるかに超えたものとなる。いったん市場が形成されれば、その市場を保護する必要が生じ、惨事便乗型資本主義複合体の中核をなす企業は政府や非営利団体をますます競争相手とみなすようになる。政府や慈善団体が従来の任務を果たすために行なうことはすべて、企業の立場からすれば、利益につながる見込みのある契約仕事を取られたとみなされるのだ。」
〜 ナオミ=クライン『ショック・ドクトリン』〜
これは劇場で上映したほうがいいのではなかろうか、真面目な話。
それくらいの内容、さあおたちあい。
BeneVerbaさんが大変な苦労をして字幕をつけてくださいました。
ギリシア制作のドキュメンタリー映画
『デトクラシー(Debtocracy)』
BeneVerbaさんのコメントから。
「ギリシア制作のドキュメンタリー映画『デトクラシー(Debtocracy)』に日本語字幕を付けて公開。これはクリエイティブ・コモンズ(CC
BY-SA)で公開されているもので、公式サイトにもそのことは明示されている。
全面で取り上げられているわけではないが、デヴィッド・ハーヴェイやアラン・バディウといった有名どころも出演。ついでに言えば、大した話ではないが1時間8分辺りのところで、このブログでも良く取り上げるお二方の写真が……。
このドキュメンタリーはNHKが「ギリシャ 財政破綻への処方箋 監査に立ち上がる市民たち 」の題名で放映したことがあるはずだが(私はインターネットで視聴)、編集で切り刻まれた結果内容から受ける印象はかなり異なっている。
NHK放映版では、その邦題通りに、債務監査委員会の結成(と不当債務の概念)が全ての解決法であるかのような締めくくり方をしているのだが、この「インターナショナル・ヴァージョン」には、監査委員会はより大きな闘いの一部だとはっきり言われている。」
だそうです。
* ムーアとクライン:怒りから希望へ *(2012.5.16)
「マドリード市内の通勤電車と駅で一〇回もの爆破が起き、二〇〇人近くが死亡した。ホセ・アリア・アスナール首相はただちにテレビでバスク分離独立主義者の犯行だと断定(その後、アルカイダ系グループの犯行だと判明した)、同時にイラク戦争への派兵を決めた政府への支持を国民に呼びかけた。「スペイン全土でこれまで幾度となく殺人を犯してきた暗殺者どもと交渉するなど不可能だし、望ましくもない。毅然とした態度をとることでしか攻撃を終わらせることはできない」とアスナールは言明した。
ところがスペイン国民はそうした論調には乗らなかった。「いまだにフランコの亡霊がさまよっている」と言うのは、かつてフランコ独裁政権下で迫害を受けた著名なマドリードの新聞編集者ホセ・アントニオ・マルティネス・ソレルだ。「アスナール首相はあらゆる行動やジェスチャー、発言を通して自分は正しい、自分の言うことこそが真実であり、それに賛同しない者は敵とみなすと語ったのです」。言い換えれば、アメリカで「強い指導力」とみなされた9.11以後のブッシュ大統領とまったく同じ資質のアスナールに、スペイン国民はファシズムの不吉な臭いをかぎ取ったのだ。爆破事件が起きたのはスペイン総選挙のわずか三日前だったが、フランコ時代の恐怖を記憶する国民はアスナールにノーを突きつけ、イラクからの撤退を公約に掲げた政党を支持した。」
〜 ナオミ=クライン『ショック・ドクトリン』〜
「信じられないくらい巨大な地上の富を人類のために使うことをこそ話題にしようではないか。民衆に必要なものを与えよう。食料、医療、清浄な空気、澄んだ水、木々や草、快適な住まい、数時間の労働、それよりも多いレジャーのための時間、それに値する者がいるかどうかなど問うてはならない。人類はだれでもそういうものを受ける権利を持っているのだ」
〜ハワード=ジン『ソーホーのマルクス』〜
『デモクラシーナウ』さんのところで、私が大好きなナオミ=クラインとマイケル=ムーアがセットになって登場。
『マイケル・ムーアとナオミ・クライン:怒りから希望へ 「すべての場所を占拠せよ」 』
怒りから希望へ、ですぜ、みなさん!
「ウォール街を占拠」運動の功績のひとつは、ことばに力を与えたことです。自分や親しい人の暮らしを苦しめる経済的・社会的な不正への憤りを口にする事が愚痴で終わらず、より良い社会を作る力になると感じた人々は、公共の場で自分の体験や考えを述べ、ひとびとの声に熱心に耳を傾けるようになりました。
2011年11月10日という同年における「占拠」運動の絶頂期とも言える時期にネイション誌の主催で開かれたパネルディスカッション「すべての場所を占拠せよ:新しい政治と企業権力に立ち向かう運動の可能性」は、ナオミ・クラインとマイケル・ムーアという、運動を早くから支持してきたとびきり人気者のオピニオン・リーダー2人をパネラーに加え、占拠運動の紆余曲折を記録する画期的なイベントになりました。」
だそうです。
* チョムスキー・「民主化」を本当は望まない米国」 *(2012.5.10)
「現に存在する市場原理主義がどう働いているか、一例にすぎませんが、見てみましょう。オバマの主要な支持基盤は金融業界でした。金融業界は、企業利益の割合が70年代には数パーセントでしたが、今日ではほぼ三分の一と、米国経済を支配するようになっています。彼らはマケインよりオバマが気に入り、選挙をそっくり買いとってやったようなものです。そして期待していた見返りを確かに受けた。ところが昨年末から、国民の募る怒りに応えてオバマは、国民の負担で救済された「欲の皮の突っ張った銀行家」への批判を始め、あまつさえ規制をかける対策の提案さえ行いました。オバマの勇み足に対して素早く罰が下された。主要銀行は、オバマが無礼な言辞をいつまでも続けるなら献金先を共和党に換えるというメッセージを突きつけました。
オバマはその意味を理解した。数日のうちに、銀行家というのは立派な「連中」だと経済紙に語りました。国民の大盤振る舞いから最大の恩恵を受けた二銀行、JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスのトップをわざわざ名指しでほめ上げ、金融界にこう請け合いました。「私も米国民の大半も、人の成功や冨を嫉んでいない」---国民の怒りを買っているボーナスや利益のことです。さらに「それは自由市場体制の一部です」と続けました。間違いではありません。」
〜ノーム=チョムスキー『アメリカ国民の怒りはどこへ向かっているか』 〜
「ひたむきで献身的な努力をすれば、意識を大きく転換させ、理解を深めることができるだろうとは、考えられていません。それは非常に危険な考えであるため、歴史から削除されているのです」
〜ノーム=チョムスキー『すばらしきアメリカ帝国』〜
『デモクラシーナウ』さんのところで、ノーム=チョムスキーの講演の日本語字幕つきがアップされております。
講演自体は、去年の物ですが、耳を傾けておくべき内容だと思います。
『アラブ世界の「民主化」を本当は望まない米国とNATO 』
「米国のメディア監視団体FAIR(Fairness and Accuracy in Reporting)は大手メ
ディアを25年にわたって監視し、少数者や反体制派の意見を排除しようとする報
道に批判を加えてきました。ノーム・チョムスキーが25周年イベントに招かれ、
アラブの春に対する欧米政府の反応、主要メディアの報道について話しました。」
ということです。15分ほどですので、楽に観れます。
* ルート・橋下&ルート・アイリッシュ *(2012.5.5)
「それでいちおうの説明がつく。われわれ人民は、その病気について無知だったため、その病気の患者である人びとへ、それとは知らずに、何度も何度も権力をあずけたのだ。
だが、いまになって彼らをあざけるのはやめよう。それは。梅毒や、天然痘や、ハンゼン病や、イチゴ腫や、チフス熱や、そのほか、肉体を侵すもろもろの病気にかかった人たちをあざけってはならないのとおなじである。われわれがなすべきなのは、彼らを権力の座から隔離することだと思う。
それからどうなるか?
西欧文明がしらふにもどる、長く苦しい道のりがはじまるだろう」
〜カート=ヴォネガット『死よりも悪い運命』〜
「ビネーは、また、自分自身の被暗示性---無意識のうちに偏見に固執することや、「客観的」量的データが先入観に驚くほどひきずられやすいこと---についての研究によって、自分自身に懐疑の目を向けはじめた」
〜スティーヴィン=J=グールド『人間の測りまちがい』〜
これ、すごいわぁ。
あ、大阪市の「家庭教育基本条例案」またの名を
「親の育て方が悪いから子どもが発達障害になる」
条例案についての話です。
「乳幼児期の愛着形成の不足が軽度発達障害を誘発する大きな要因」
とか
「わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できるものであり、こうした子育ての知恵を学習する機会を親およびこれから親になる人に提供する」
とか、
発達障害の予防防止に「親を責めることで神風を吹かせましょう!」ってことだぜよ!
どんな怖いホラーよりも怖いよ。
くわしくは、『俺の邪悪なメモ』さんから、
『トンデモ教育論「親学」を推進してる人たちの話 』
「 大阪維新の会が大阪市議会に提出しようとしてる条例案。
「育て方が悪いから発達障害になるんだぜ!」
「子どもの教育のために親をしばこうぜ!」
「日本の伝統的子育て最高!」
と、まあそんな感じの内容。マザコン、マッチョ、パターナリズムって感じでSAN値が下がります!』
やばい、やばい、やばい、この国、ほんとにやばい……。
こんなこと、考えつく時点で、ふつうにアウトなんじゃあ……・
大阪は、日本は、わしの暮らしはこれからどうなるのじゃろう。
--☆---
ケン=ローチの最新作『ルート・アイリッシュ』、弟に付き添われて観てきました。
ケン=ローチが本気出して撮った映画で、やはり、素晴らしい。
これからみなさん、ご鑑賞になるでしょうから、ネタ晴らしはひかえて。
どうでもいい系の、ちょこっと話。
1.ちょい役(というか会話の中でしか出てこない)の人間で、あだ名が「マッド・マックス」という悪党が出てきます。暴走狂なのでそういうあだ名がついたのですが、それだけじゃない。「マッド・マックス」という映画の内容をようよう考えると、そのあだ名にふさわしい人間は別にいることが分かります、それは……主人公自身。
2.ラスト間際に、あるテロ事件が起りますが、そのシークエンスにおいて、ある女性の配置の仕方など、非常にうまいです。うまいだけではなくて、メッセージがあります。さすがケン=ローチだと思いました。
『ルート・アイリッシュ』予告編
VIDEO
* 『ママゴト』2巻 *(2012.5.1)
「こまの底にしがみついて
ぐるぐるまわる幽霊のように
ぼくは
きみなしで
生きる宇宙の
広さにおびえて
いる」
〜リチャード=ブローティガン『べえー、永遠に』〜
「ひとりひとりの個人の運命を改善することなくしては、よりよき社会の建設は不可能です。ですから、各人が自分の運命を切り開いていこうと努力しながら、しかも同時に全人類にたいして責任をわけ持たねばならないのです。なぜなら、自分が一番役にたってあげられる人々を助けることは、私たちひとりひとりの義務だからです」
〜キューリー夫人〜
「さよならを言っておいてまず間違いはない」
〜カート=ヴォネガット『猫のゆりかご』〜
松田洋子先生の漫画『ママゴト』の2巻が届く。
椎名林檎さんの初期の歌から、エキセントリックさを目減りさせて、かわりに泣き笑いを盛ったような、そんな漫画作品。
これは、各方面におすすめ。ただし、
切望と不吉さで読者をぶん回しにするので、身が持たない。
(^_^;)
と言いつつ、読んでいるのだ私は。
(^_^;)
次回発売の3巻が最終巻なのだそうだ。
とにかく、
ラース・フォン・トリアーな結末にならないことを願います。
ショック死するとは言わないけれど、一週間くらいしゃっくりが止まらないとか、そういうことになりかねない。
* 9.11のニュース・アーカイブ3000時間 *(2012.4.28)
「欧米のめぼしい新聞や雑誌はどれをとってみても、この巨大化した終末論的な語彙をさらに強調するような論説であふれている。それらの言葉の使い方ひとつひとつが、読者を啓発するというよりも、「西洋」の一員としての義務に火をつけ、何をなすべきかとたきつけるだけの意図に満ちている。チャーチル流のレトリックを不当に借用した者たちが、憎悪をもって略奪と破戒を企てる敵に対する西洋(とりわけアメリカ)の戦争における戦士を勝手に名乗っているのだ。そのように単純化された見方をくつがえすような複雑な歴史には、ほとんど注意が払われない」
〜E=W=サイード『戦争とプロパガンダ』〜
「現に存在する市場原理主義がどう働いているか、一例にすぎませんが、見てみましょう。オバマの主要な支持基盤は金融業界でした。金融業界は、企業利益の割合が70年代には数パーセントでしたが、今日ではほぼ三分の一と、米国経済を支配するようになっています。彼らはマケインよりオバマが気に入り、選挙をそっくり買いとってやったようなものです。そして期待していた見返りを確かに受けた。ところが昨年末から、国民の募る怒りに応えてオバマは、国民の負担で救済された「欲の皮の突っ張った銀行家」への批判を始め、あまつさえ規制をかける対策の提案さえ行いました。オバマの勇み足に対して素早く罰が下された。主要銀行は、オバマが無礼な言辞をいつまでも続けるなら献金先を共和党に換えるというメッセージを突きつけました。
オバマはその意味を理解した。数日のうちに、銀行家というのは立派な「連中」だと経済紙に語りました。国民の大盤振る舞いから最大の恩恵を受けた二銀行、JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックスのトップをわざわざ名指しでほめ上げ、金融界にこう請け合いました。「私も米国民の大半も、人の成功や冨を嫉んでいない」---国民の怒りを買っているボーナスや利益のことです。さらに「それは自由市場体制の一部です」と続けました。間違いではありません」
〜ノーム=チョムスキー『アメリカ国民の怒りはどこへ向かっているか』 〜
これは必見だ。
『デモクラシーナウ!』から。
『9.11のTVニュース・アーカイブ:
3000時間分の映像がオンラインで 』
「現代社会に生きる私たちは、良かれ悪しかれテレビ報道を通じた世界認識から逃れることはできません。そうであれば、報道映像のアーカイブ化と比較検証を可能にする検索参照ツールの充実は、正確な情報の認識と判断のために当然必要になってくるはずです。日本でも、原発事故関連報道の問題点などが指摘される中、テレビのニュース報道を網羅的にアーカイブする事業にチャレンジする人が誰か出てきてほしいものです」
だそうです。
*ナオミ=クライン&アサンジ×ジジェク*(2012.4.19)
「社会主義の名のもとに、何十年にもわたって残虐行為が行なわれてきた記憶がいまだに生々しく残っているため、ロシア国民にとっての怒りのはけ口はナショナリズムかネオファシズムぐらいしかない。民族間の紛争は年に約三〇パーセントの割合で増加し、2006年には毎日のようにその事例が報告されている。「ロシア人のためのロシアを」と言う愛国敵スローガンを支持する国民は六〇パーセント近くに上る。「国民の大多数に満足のいく生活を提供するという点で、政府は自分たちの社会・経済政策は欠陥だらけであることを十分に認識している」と反ファシズム活動家ユーリ・ヴドヴィンは言う。にもかかわらず「政府は自らの失敗を、異なった宗教、異なった肌の色、異なった民族的背景を持つ者のせいにしている」
ショック療法がロシアや東欧諸国で実施されたとき、それに伴う痛みは、ナチズムの台頭を許してきたワイマール共和国の状況を二度とくり返さないための唯一の手段だとして正当化された。ところが皮肉なことに、自由至上主義のイデオローグたちは何千万という人々をばっさり切り捨てた結果、かつてのワイマール共和国と恐ろしいほどよく似た状況を招いてしまった。外国勢力によってプライドを傷つけられたと感じた人々は、国内のもっとも弱い者に工芸の刃を向けることで国家の誇りを取り戻そうとしているのだ。」
〜ナオミ=クライン『ショック・ドクトリン』〜
「西欧型社会はふたつの大きな問題に当面しているということだ。冨は、至るところで不公平に配分されており、有償労働の獲得も公平に行われていない。このふたつの問題が不安への潜在要素となっている。これに対処しうるものとして、犯罪取締産業が存在する。この産業は利益をもたらすとともに、取り締まなけらば社会秩序を乱すおそれのある人間を統制する」
〜ニルス=クリスティーエ『司法改革への警鐘』〜
『デモクラシーナウ!』に日本語字幕つきでナオミ=クラインが登場。
「昨年10月「ウォール街を占拠せよ」で素晴らしいスピーチをしたカナダのジャーナリスト、ナオミ・クライン。その直前にデモクラシー・ナウ!のスタジオでグローバリゼーションに抵抗する運動の現状を語りました。「ウォール街占拠」はもちろん、折りしもチリで盛り上がる学生運動や、9月末にワシントンで行われたパイプライン敷設阻止の大規模な非暴力抗議行動などについても報告します」
『ナオミ・クライン 「ウォール街を占拠」に参加 パート1 』
『ナオミ・クライン 「ウォール街を占拠」に参加 パート2 』
『デモクラシーナウ!』から、「ジュリアン=アサンジとジジェクの対談・完全版」のDVDが届いた。
私はジュリアン=アサンジならびにジジェクのことを、ねっこから信用はできない山師的なものとして眺めている部分があるが、それはそれとして自覚しつつ、このDVDは楽しみにしていた。
『ジュリアン・アサンジとスラボイ・ジジェクの対談 Part 2 新マッカーシズムの台頭、コミュニケーションの権利、アラブの春へのウィキリークスの影響、クレジット会社提訴など 』
対談の後半部分をご紹介しておきましょ。
*スイシンジャーが怪人小出男と対決!*(2012.4.14)
「ひとりひとりの個人の運命を改善することなくしては、よりよき社会の建設は不可能です。
ですから、各人が自分の運命を切り開いていこうと努力しながら、しかも同時に全人類にたいして責任をわけ持たねばならないのです。
なぜなら、自分が一番役にたってあげられる人々を助けることは、私たちひとりひとりの義務だからです」
〜キューリー夫人〜
「ここに呈示するのは、非常に悲観的な分析である。それは人生は充足させることにあると信ずる私の基本的態度と対照的である。それはまた、私が多くの理由から特に親近感を感じているアメリカ合衆国に関する分析でもある。アメリカ合衆国内外のセミナーや講義で私の分析の一部をアメリカの同僚に伝えると、皆不快感を示した。彼らは、必ずしも不同意を示したわけではなく、逆に、私が描いた発展への特別の可能性を有する国の代表と見られることに不快感を示したのである。この場合、西欧の独裁者が演じた例は、再びヨーロッパでも演じられる危険性が高いといったところで、慰めにはならないのだ。
しかし、警告は、ある種の楽観主義でもある。警告は、変化への可能性に対する信頼を含んでいるからである」
〜ニルス=クリスティ『人が人を裁くとき』〜
小出先生も付き合い、いいなあ。
とにかく、やるならここまで演出しなくては駄目ってこと。
『スイシンジャー異形編』
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切り口の面白さ、がありますね。